『女たちの王国』…「結婚のない母系社会」について

 逗子図書館収蔵、曹惠虹(チュウ・ワァイホン)著。
 副題は…「結婚のない母系社会」中国秘境のモソ人と暮らす、です。以下、紹介文を抜粋します。

●ヒマラヤ東端、中国雲南省と四川省の境にある美しい「ルグ湖」のほとりに、「モソ人」と呼ばれる純粋な「母系社会」を守り続ける人びとがいる。

●国際ファンド系弁護士の職を辞した著者は、訪れたその地にすっかり魅せられ、ついに家を建てて自身が暮らすまでになった。

祖母を中心にその娘、孫娘と代々直系の女性が「家長」となる「家母長制社会」。

●「結婚」「夫」「妻」「父親」の概念が存在せず、男女は「走婚」と呼ばれる自由恋愛を通じて子をなし、すべての
子は母系の家に暮らし、成長し、老いていく。


 いかがでしょう。
 もしかしたら、伝説にある「アマゾンの国」や「女人国」のモデルかもしれません。昔はこういう母系社会が、地球上のあちこちにあり、次第に滅びていったのかもしれません。

 日本でも母系の強い家系というのはありますが、一つの民族がこういう制度を長く続けてこられたというのは、地理的に隔離されていたという幸運もありますが、奇跡的なことではないでしょうか。

 もっとも、観光産業が盛んになり、外来者が増えるにつれ、この制度は薄れつつあるようです。なおさら、著者の報告が貴重になります。

 なお、神奈川県立保健福祉大学の金龍哲教授にも「東方女人国の教育:モソ人の母系社会における伝統文化の行方」、「結婚のない国を歩く:中国西南のモソ人の母系社会」という著作があるそうです。いずれも大学教育出版。

 これまで、人類社会のほとんどの文化は「家父長制」で続いてきました。家は息子が継ぎ、娘は外の家庭に嫁ぐというシステムです。
 太古には「母権制」があったという説もあるようですが、定説ではないようです。母系的な社会が存在したとしても、男性の腕力がものをいう時代では、存続は難しかったのではないでしょうか。

 しかし、これからの時代、結婚する人の割合は低下していく見通しです。経済要因も大きいですが、旧来の結婚制度は、女性に大きな負担を強いてきた、という面もあると思います。

 フランスのようなカトリック系の国では、離婚が大変なため、最初から結婚ではなく、同棲を選ぶ(注、PACSという制度あり……民事連帯契約)という方向に進んでいるようです。
 アメリカもまた、離婚大国です。日本も、それに続いています。これまでの結婚制度は、もはや制度としての強制力を持たなくなっています。

 違う家族の在り方を考える時に、こういう「女系文化」は参考になるのではないでしょうか。
 実際問題として、女性が妊娠・出産・子育てする時に、祖母や母、叔母や姉妹など、同居する血縁女性の助けが簡単に得られるとしたら、非常に嬉しいと思いますが。

 男性にとっても、母親の住む家にずっといられて、外で自由恋愛を楽しめるというのは、ある種の理想なのではないでしょうか。
 一時的な恋人のことを「アシア」と言い、男性からすると、自分のアシアの生んだ子供に対する扶養義務はありません。子供の扶養は、母方の一族が行います。

 この場合、男性にとって、自分の子供はよその家で育つわけですが、自分の姉妹が産んだ子にとっては、「頼もしいおじさん」になるわけです。男性は自分の生まれた家で働き、身内の子供たちを守り育て、外に出た時に、外部の女性を魅了するように振る舞うのです。
 悪くない、というか、とても合理的な気がしますが、どうでしょうか?


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